「新札ダサい」と感じた方へ──その印象、本当に正しいのでしょうか?SNSでは「数字が大きすぎる」「フォントが野暮ったい」などの声が見られますが、その背景には深い理由が隠れています。本記事では、新札に対する否定的な意見の正体を明らかにしつつ、なぜ“見やすさ”や“公共性”が重視されたのかを丁寧に解説します。また、欧米との比較や、採用されたユニバーサルデザインの狙いも詳しくご紹介。読み終える頃には「ダサい」という印象が少し変わっているかもしれません。新札をより深く理解したい方は、ぜひご覧ください。
1. 新札ダサいと話題に?まずは疑問の正体を整理
1-1. SNSやネットで囁かれる「ダサい」と言われる3つの理由
「新札がダサい」と話題になっている理由には、主に以下の3点が挙げられます。
- 数字のデザインが大きく、野暮ったく見える
- 書体が丸く、子どもっぽく感じられる
- レイアウトのバランスに違和感がある
SNSでは「まるでおもちゃのお札みたい」「見た瞬間、昭和レトロを感じた」といった声も目立ちます。これらの批判の多くは、これまでの紙幣と比較したときの“違和感”に起因しています。つまり、「ダサくなった」と感じるのは、私たちが旧札の印象に強く影響されているからとも言えるでしょう。
1-2. 一見ダサく見える理由は“数字の大きさ”だけじゃない
新札のデザインで特に目立つのが、額面数字(10000や5000、1000など)の異常なほどの大きさです。これがダサさの主因とされがちですが、実は問題はそれだけではありません。
たとえば以下のような細かな変更も、印象を大きく変えています。
デザイン要素 | 変更前(旧札) | 変更後(新札) |
---|---|---|
フォント | 明朝系の伝統的な書体 | UD(ユニバーサルデザイン)フォント |
色味 | 褐色系中心の落ち着いた配色 | コントラスト強めの鮮やかな色使い |
額面数字の配置 | 左上・右下などに小さめ表示 | 中央や左端に大きく配置 |
このように、見た目の“ゴロつき感”は、複数の要素が合わさって感じられる違和感なのです。
1-3. 書体や色味が変わった背景にあるデザインの目的
新札のデザインには、単に「見た目を変えた」というだけでなく、使いやすさを最優先にした意図が込められています。特に注目すべきは、採用された「UDフォント(ユニバーサルデザインフォント)」です。これは、高齢者や視覚障害のある方にも読み取りやすい書体として、公共交通機関や医療現場などでも広く使われているフォントです。
色使いについても同様で、視認性を上げるためにあえて強いコントラストが意識されています。つまり、デザインの変更はダサくしたのではなく、より多くの人が使いやすくするための工夫だったというわけです。
2. 新札が「見やすさ重視」で生まれ変わった理由とは?
2-1. 採用された「ユニバーサルデザイン書体」とは何か?
ユニバーサルデザイン(UD)フォントとは、誰でも読みやすいことを目的として開発された書体です。2024年発行の新紙幣では、「イワタUDフォント」や「モリサワUD新ゴ」などがそのベースとされています。
これらのフォントには以下のような特長があります。
- 線の太さが均一で読みやすい
- 数字の「1」とアルファベットの「I」などを明確に区別
- 書体全体が丸みを帯び、目への負担が少ない
高齢者や視覚に障害のある方、小さな子どもなど、多様なユーザーを考慮した書体選びがされている点に注目です。
2-2. 視覚・色覚障害者も使いやすい書体の工夫
視覚に困難を抱える方にとって、文字が読みづらい紙幣は誤認の原因になります。特に「0」と「6」、「1」と「7」など、形状が似ている文字は誤解されやすいのです。
そのため、新札に使用されたフォントでは以下のような配慮がされています。
- 文字の“はらい”や“とめ”をしっかり分けて視認性を向上
- デジタルフォントに似た直線的な造形で誤読を減少
- 見え方にばらつきが出にくい設計
つまり「万人に使いやすいお札をつくる」という姿勢が、書体の選定にもしっかり反映されています。
2-3. 誰にでも読みやすくするための「数字の間隔」「記号の形」
新紙幣のデザインで最も目立つ要素のひとつが、額面数字の極端な大きさと文字間のゆとりです。
- 「10000」や「5000」などは、横幅いっぱいに数字が広がる
- 1文字ずつの間隔を広めにとり、数字の識別性を高めている
- 「¥」や「,」などの記号類も、独立して視認しやすい形状に変更
これらの工夫は、急いで支払うシーンや薄暗い場所でも誤認しないためのものです。デザイン面では違和感が残るかもしれませんが、「見やすさ」を第一に考えた設計であると理解すれば、印象が変わってくるかもしれません。
3. 「新札ダサい」は間違い?美しさより優先された“公共性”
3-1. 美的センスよりも求められた“誰でも使える紙幣”
「新札がダサい」と感じる方の多くは、従来の“美しさ”を基準に判断している傾向があります。しかし今回の紙幣刷新では、美的バランスよりも公共性や機能性が最優先されています。たとえば、書体にはユニバーサルデザインが採用され、高齢者や色覚障害のある人でも金額を正確に判読できるよう工夫されています。
この背景には、日本国内の高齢化社会への対応や誰にとっても使いやすい社会インフラの整備という視点があります。デザイン性を犠牲にしてでも「間違えにくいこと」「誰が見ても同じ情報を得られること」が、何より重視されました。
3-2. 新しいデザインに込められた時代の価値観
紙幣はただの印刷物ではなく、時代を映す鏡です。今回の新札では、「美しさ」よりも「伝わりやすさ」がデザインの軸に据えられています。これは、2020年代以降の多様性やインクルージョン(包括性)を大切にする価値観の影響が大きいと考えられます。
特に注目すべきなのは、「誰でも平等に使える」ことを第一に考えた点です。ユニバーサルデザインを通じて、誰一人取り残さない社会の実現を目指す姿勢が、紙幣のデザインにも反映されています。
3-3. 「見た目がダサい」と言い切る前に知っておきたい視点
表面的な見た目だけで「ダサい」と評価してしまうのは、少し早計かもしれません。そもそも紙幣とは何のために存在しているのか。その原点に立ち返ると、「すべての人が誤認せずに使える」という役割こそ最も重要です。
以下の表に、従来との意識の違いをまとめてみました。
評価基準 | 旧紙幣(従来型) | 新紙幣(2024年刷新) |
---|---|---|
重視されたポイント | 芸術性・印刷技術の緻密さ | 読みやすさ・識別性・誰でも使える設計 |
主な対象ユーザー | 一般成人を中心とした設計 | 幼児~高齢者、視覚障害者まで想定 |
美しさの位置づけ | 最優先 | 二次的要素 |
このように、「ダサく見える」デザインにも、深い意味と社会的意義が込められていることがわかります。
4. 海外の紙幣デザインと比較して見えてくる日本の工夫
4-1. スイス・欧州・米国とのデザイン思想の違い
海外の紙幣を見ると、各国の価値観や文化が色濃く反映されています。たとえばスイスのフラン紙幣は縦型でカラフルなデザインが特徴的ですし、ユーロ紙幣はヨーロッパ統一通貨としての象徴的な建築物が描かれています。
一方、アメリカのドル紙幣は長年デザインをほとんど変えておらず、信頼性と歴史的継続性を重視しています。日本の新札はこれらと比べて、視認性とセキュリティを両立させる点で独自性があります。
4-2. 日本の紙幣に込められた安全性とデザインのバランス
日本の紙幣は偽造防止技術でも世界トップクラスです。新札には以下のような複数のセキュリティ機能が組み込まれています。
- 高精細なホログラム
- すかし技術の強化
- 高度なマイクロ文字印刷
これらを維持しながら視認性の高いデザインに仕上げるのは、極めて高度な印刷技術とバランス感覚が求められる作業です。見た目だけでなく、「使いやすさ×安全性×技術力」の三拍子が揃った通貨が、日本の紙幣といえます。
4-3. 実は日本の新札は“技術的に世界最先端”
2024年の新紙幣に盛り込まれた偽造防止技術や視認性配慮は、国際的に見ても最先端と評価されています。特に「3Dホログラム技術」は、立体的に肖像画が浮かび上がる革新的な試みです。世界でもこの技術を採用している国はごくわずかです。
さらに、点字の配置や紙質にも配慮がされており、実用性と先進性を兼ね備えた通貨として、将来的に他国の参考モデルになる可能性も高いでしょう。
5. 【まとめ】「新札ダサい」と切り捨てる前に考えたいこと
5-1. 美しさだけでなく“誰でも使える”という価値を評価する
デザインにおいて「美しさ」は確かに重要です。ただし公共物としての紙幣においては、誰にとっても読みやすいこと、使いやすいことの方が優先順位は高いのです。
高齢者や子ども、障害のある方にもやさしい設計が求められる中で、万人が等しく使える“道具”としての理想形を追求した結果が今回の新札です。
5-2. 生活者目線で見直す「紙幣デザインの本質」
「かっこよさ」や「伝統美」も大切ですが、紙幣はあくまで日常で使うものです。生活者目線で見れば、「間違えない」「すぐわかる」「誰でも読める」という要素こそが最も重要になります。
つまり紙幣のデザインは、アートではなく生活を支えるユーティリティと考える視点が求められます。
5-3. ダサいかどうかは“知識”で変わる。見え方のアップデートを
見た目の第一印象に引きずられず、その背景や意図を知ることで評価は変わります。「ダサい」と感じていた新札も、ユニバーサルデザインの意義や高度な技術の結晶であると知れば、その見え方が大きく変化するかもしれません。
新札の評価は、私たち自身の“視点のアップデート”にかかっています。
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